「珠理、行くぞ」



「行くって何処に!?」



卒業して、就職が決まっている悠斗は翌日から仕事に出ていた。



初めて2人の休みが重なった3月9日。



珍しく悠斗はスーツに腕を通していた。



「行くったら行くの」



「そんなに気合い入れて何処に行くのよ」



「珠理はラフな格好でいいから」



会話になってないし・・・・・



悠斗に強引に連れ出され、アパートを出た。



あ、お義母様達は長いお義父様の出張も終わり、こっちに戻ってきたみたい。



悠斗が住所を教えてくれないから挨拶はまだ行ってないんだけどね。



私は携帯を持っていないし、アパートには電話がない。



そもそも、電話番号すら知らないから連絡の取りようがない。



「珠理、俺さ?思うんだよね」



思うって、何が・・・・・



「花嫁が幸せになる一つの条件」



なにそれ。



「両親の承諾とお祝い」



「え・・・・・」



「だから今日はちゃんと挨拶に行こう?」



いつの間にか家の前まで来ていた。



どうして歩いている道で気付かなかったのだろう。



「でも・・・・」



「まだ怖い?」



怖い、のかな・・・・?



「ちゃんと俺が付いてる。何があっても俺が守る。それでもまだ不安?」



不安・・・・・



「悠斗が守ってくれるんでしょ?なら頑張るよ」



悠斗は私に笑顔を向けると、チャイムを鳴らした。