向かった先は、5年前の事故現場だった。


電信柱の横にくくりつけられている小さな花瓶に買ってきたユリをさす。


あたしより先に誰かがやって来たんだろう。


花瓶は綺麗な菊やユリでいっぱいで。


その光景に胸がギュッと締めつけられる。


お兄さんは……


こんなにもたくさんの人に愛されていたんだね……?



「5年前、見ず知らずのお兄さんがあたしのことを助けてくれたの。そのお兄さん、あたしのかわりに死んじゃった……」


「5年前?」


「そう。5年前の今日までお兄さんは元気に暮らしてたの。それなのに……あたしを助けたばかりにお兄さんは……――」


5年前の事故を思い出すにつれ、言いようもない悲しみが胸の奥深くからグッとこみ上げてきて。


やっぱり優輝を連れてきたのは間違いだったかも……。


初対面の女にそんな重たい話されたら、誰だって反応に困るよね。


あたし、何で初対面の優輝にこんな話してるんだろう……。