純恋〜スミレ〜【完】

「……――っ。お母さん、玉ねぎが目にしみちゃったみたい。ちょっと顔洗ってくるわね」


「分かりやすすぎだから」


目を潤ませながらキッチンを後にしたお母さん。


思わずクスッと笑みが漏れる。



今まで、気付かずにいてごめんね。


それが当たり前だって思ってたから。


だけど違うんだよね。


お父さんが仕事をしてくれるから、こうして暖かい部屋の中にいられて。


お母さんが家事をしてくれるから、こうして美味しい料理が食べられて。


掃除だって洗濯だって、いつもお母さんに頼りっきりで。


それが全て当り前だって思ってたから、感謝の一つも口にしたことなんてなかったね。