駅の方向にゆっくりと歩き出す。
行く先なんて分からないまま。
ぼんやりと歩き続けても、漠然とした答えが出るわけじゃない。
優輝に会えるわけでもなければ、
優輝のお兄さんを奪ったのがあたしだという事実も変わらない。
それなのに、歩き続けた。
寝不足でフラフラとする足取り。
横を通り過ぎる人々があたしを見てギョッとする。
そんなに酷い顔してるのかな、今のあたし。
そのまま歩き続けると、駅前の大きな交差点に辿り着いた。
歩行者用の信号機は赤。
目の前をビュンビュンとたくさんの車が通り過ぎていく。
「……あっ……――」
その時、あたしは見つけてしまった。
横断歩道の向こう側にいる、愛する人の姿を。



