――コンコン―― 「入れ。」 中から聞こえるのは羽衣の愛する人のなんとも素っ気ない声。 「失礼します。」 「………羽衣っ。」 机上に積み上げられた書類の山に目を通していたルカは 数秒ののち、目の前に現れた愛しい存在に気づき目を見開く。 「紅茶をお持ちしました。」 「…あぁ。ありがとう。…じゃなくてジャンはどうした?」 珍しく狼狽えるルカ。 「ジャンさんのほうがよかった?」 ジャンさんが用意してくれた紅茶をティーポットからカップへと注ぎ 山積みの書類を避けるように机の上に静かに置いた。