キミ色

少しだけ和らいだ雰囲気の中に、チャイムの音が鳴り響いた。
生徒達が椅子から立ち上がる音が、一斉に聞こえ出す。



やばい…
このままだと、すぐに大勢の生徒達が来て俺達を話のネタにするだろう。



でも、力の抜けてしまっている若菜チャンが目の前にいる。
きっと、立ち上がるのも困難だ。



「槻丘クン?行っていいよ。あたしなら、大丈夫だから…」


そう言って儚く笑う若菜チャン。
本当は傷付いているのに…、本当は全然大丈夫なんかじゃないのに…



やっぱりキミは強がりだよね。
そうやって、また我慢しようとする。



やっぱり、こんな状況でほっとける訳がない。



「ちょっと、来て」



若菜チャンの手を掴むと俺は強引に引っ張った。
手を掴んだだけでも、完全に力が抜けているのがよく解る。



「え?ちょっ!」


「いいから」



動揺している若菜チャンをとりあえず無視し、俺は一気に走り出した。
ある場所まで走り続ける俺の足は、止まらない。



もうちょっとだから、我慢して…
もう少しで落ち着く場所に到着する。



俺は躊躇することなく、道を突き進み続ける。
次の角を曲がれば、もう流石に大丈夫だろう。