「水竜(スイリュウ)の子どもを群れに帰さなくちゃならねぇんだ。」

「スイリュウ…?」


星来がすっと籠を開ける。
その中には…


「これが…水竜…ですか?」

「ええ。どうやら群れからはぐれちゃったみたいで。
で、まだ子どもだから親がいないと育てられないのよ。水竜って謎に満ちた生物だから、人工的に育てる設備も何もないし…。」


籠の中の水竜の子どもは、体長およそ55センチ。
身体の色は薄い水色で、ちょうど星来の髪と同じ色だった。
身体は艶があって美しい。
今はすやすやと眠っている。


「スリープ、かけてるからね。起き出すと大変なんだこれが。」


心底困ったような声で話し始めたのは白斗だ。


「子どもだからなのか何なのか分からないけど、とにかくコミュニケーションが図れないんだ。星来の力をもってしてもね。
親がいないという不安から暴れるし、吠える。大きさこそ小さいけど、それでも竜だから…一度暴れると押さえるのは一苦労だよ。」

「あ…えっとあたしたちの能力は…。」

「大雑把にですが把握してるつもりです。
…ですが良ければ自己紹介していただいてもいいですか?」

「あ、もちろんよ。
あたし、氷泡星来(ヒホウセイラ)。能力はハートで心が読める…のと、意志疎通が可能、かな。多分。」


薄い水色の長い髪が風に揺れる。
その目は髪と同じ青を宿している。
…王家の人間らしく、表情にも佇まいにも気品は兼ね備えられている。