「あのっ…ごめんね、蒼刃が考えナシで…。」

「あ、いえ。」

「でもすごいのね、あなた。
見た目、あたしと変わらないくらいなのに剣をあんな風に使えるなんて…。」

「おい星来!」

「うわっ!何よ蒼刃!」

「素性の分かんねぇ奴に近付くな。」

「今から知るもん!素性とかそういうの!」

「それまでは近付くなっつってんだ。」

「なによー!」


…まるで本の中のようなやりとりに思わずぷっと吹き出した。
一応、『本の中の住人』たちにはバレていないようだ。


「何笑ってるんですか?」

「あ、大島さんにはバレたかー。」

「隣で笑われたら気にはなりますよ。」

「だってさー面白くない?
『アクアマリンの秘密』本編にはこんな話なかったじゃん。そもそも俺たちなんて登場しないし。
それなのにキャラクター性はそのままで、生きた会話してるっつーかさ。
星来と蒼刃の不器用だけど想い合ってるみたいなところ、結構好きだったから生で見れて嬉しいし…
でも生だと刺激強すぎっていうか、こそばゆいっていうか…ね。」

「気持ちは分かります。」

「それよりもどうするの?
全部話すって言っても君たちは本の中の人でーなんて言ったら気を悪くするよ。
彼らは本の中を『生きている』わけだし。」

「そこは考えがあります。
小澤さんは『時の皇子と記憶の舞姫』を読みましたか?」

「もちろん。」

「その設定をお借りしようかと。」


そう言って彼女は小さく笑った。