しかし、まさか………迎えに来てくれるとは。









「………何を笑っていらっしゃるの?」

「いえ、何もありませんよ」




そう返答しつつも、僕は込み上げる笑いを抑えきれずにいた。






おかしな人、と眉をひそめる妻。






意地っ張りは、僕も妻も同じだ。







「ありがとう、瑞江さん」

「お礼を言われる意味がわかりませんわ」

「何となく、言いたくなりました」








瑞江さん。

僕を捜しに来てくれたのですよね?









首を傾げる妻。

その手を、僕は握り締める。





存在を、噛み締める様に。








「帰りますか。いい報せがある様な気がしますから」










藍色の空、漂う薄雲。



しっとりと浮かぶ、真冬の冴えた上弦の月。







はい?と眉を跳ね上げる妻と肩を並べ、歩き出す。









そう、僕はこの現実が愛おしい。





隣を歩く妻。


彼女もまた、僕の幸せの一部であると実感した。







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