私はその言葉の意味合いがいまいち分からず首を傾げる。
その意味に気づいたのか少し目つきを悪くする。
「俺の名前は蓮だ。山口は苗字だろ?呼ぶなら名前で呼べよ。」
なるほど。つまり名前で呼べばムーンダストの意味を教えてくれる訳だ。
『蓮君。ムーンダストの意味を教えてください。』
私はそういうと笑いながら頭を下げた。
蓮君は満足そうに頷くと一瞬笑顔を零した。
その笑顔は優しくて、穏やかだった。
いつもの蓮君ととは少し違った感じだった。
訂正。全然違った。
「ムーンダストってのはな。花の名前だ。」
蓮君は穏やかな表情で小さな手帳を取り出した。
クリーム色のクローバーのワンポイントが付いた無地の手帳だった。
意外だな。蓮君の手帳、可愛い。それに花のこと知ってるんだ。
私も思わずつられて穏やかな笑みを零す。
「何にやけてんだよ、気持ち悪い。」
ひどい。一瞬でもいい人だと思った私が馬鹿だった。
でも悪い人ではない。と思ってしまう。
それはきっと蓮君がいい人だからだよね。
「カーネーションの色違いみたいなやつだよ。」
蓮君はそういうと手帳から一枚の写真を取り出す。
そこには綺麗な青紫の花と綺麗な女の人がいた。
花も綺麗だけどたっていた女の人も凄く綺麗で、まるで…
たとえるならこの花をそのまま人間の形にしたみたいな。
そんな印象だ。
『綺麗…』
思わず呟いた私に、蓮君は視線を向けるとにかっと笑う。
「綺麗だろ。」
蓮君は凄く胸を張って威張ったように言う。
何か可愛いなぁ。と思ってしまう。