『よし、OK。』
今日から高校生になった、私、星野奈々は鏡の前に写る自分の姿に少々不安を抱きながらも可笑しいところがないのを何度も確認した。
初めての制服に初めてのお化粧…。いつもドジを踏んでしまう私にとってはとても危険な挑戦だった。おまけに髪を巻いたりして朝から結構張り切っている。
高校デビューだもん。
親友の友達についていって選んだ高校で、かなり規則が緩い学校だった。
その親友は今日から髪を茶髪に染めるんだ、と張り切っていたが自分的にはあまり目立ちたくないのもあり、親友の考えからは一歩離れ、墨のように黒いこの地毛で登校することを決めたのだった。
今一度可笑しくないのを確認すると自室から飛び出し父親、母親、兄、妹の待つリビングへと向う。
急いでリビングへと向かうとそこからはいい香りがして朝ごはんを創造させる。
『おはよう』
私は兄と妹の間のいつもの特等席に腰掛けると勢い良くご飯に噛み付いた。
今日の朝ごはんはトーストにジャムの普通な食事。
それにお母さん特性のオレンジジュースにスクランブルエッグ、ミニサラダだった。
「あれ?奈々化粧付けてる?」ドキッとしながら声の方向を見ると私を不思議そうに見ているお兄ちゃん。私は食事を食べることをやめずに軽く頷くと皆が変なものを見たかのように私を見た。
「熱でもあるのかしら…」
お母さんは急いで体温計を取りに引き出しへと駆け寄った。お父さんも箸を止めると慌てた様にお母さんの後へと続いた。…違うのに。
『今日は初めての高校だから張り切っただけだよ。もぅ…いってきまぁす』
私はそういうと鞄を手に持ち玄関へと向かう。と、私の足音と混じってもう一つ足音が聞こえるのに気づき後ろを振り返ると、「いってらっしゃい」とお兄ちゃんに頭をなでられた。お兄ちゃんは笑って見せると頭から手を離した。
お兄ちゃんの手は暖かくて、いい香りがした。
『行ってきます!』
私はお兄ちゃんに笑顔を返すと靴を履いてドアに手をかける。ドアの外には大好きな親友の姿があった。
『美羽!きてたんだぁ。おはよう』
私が親友の傍へ駆け寄るとお兄ちゃんは安心したようにドアを閉めた。
その姿に私も安堵の息を漏らした。
「奈々おはよう」
隣にいた美羽は私とお兄ちゃんのやり取りに微笑を浮かべ、私の肩をたたいた。