友理の家。
友理が、勉強に一段落つけて、
部屋から出て来た。
台所に行き、冷蔵庫を開け、
何かないかと物色していると、
お母さんが来た。
「今度、三者面談やろ。
あんた、どないすんねん」
少し間があいて、友理が答えた。
「ウチ、就職するわ」
意外な友理の言葉に、母は、驚いた。
「えっ、なんでやの。
家のことなら、心配せんでええんよ」
「せやけど……」
「あんたは、いらん心配せんと、
大学、行ったらええやん」
「うん……けど」
「お金のことなら、ウチに、
ドーンと、任せとき」
そう言ってお母さんは、胸をドンと叩いた。
「ゲホッ、ゴホッ」
「やっぱり、任せられへんやん」
「ハハハ、ちょい強う、叩き過ぎたわ」
「大丈夫なん?」
お母さんは、悪戯っぽい顔になって、
「大丈夫、大丈夫。
あんたは、ええ大学入って、
ええ会社入って、ええ男捕まえて、
ウチを、楽にしてくれたらええねん」
すると、友理も、
「そやな、ほな、そうしよか」
「ハハハ、あんたも、乗るなあ。
まっ、それは冗談やけど、
大学は、行っとった方が、
ええのんとちゃうか?
行きとうても、行かれへん人も、
ぎょうさん、いてるんやで」
「うん……」
友理は、まだ決めかねているようだった。

