祐太に、その素振りは、見えなかった。

佐紀は、よく、祐太を見ていた。

その時、たまに目が合っても、
祐太は自然に、他に注意が移っていた。

むしろ、佐紀の方が、ドキッとして、
目をそらしていた。

だから、この祐太の告白は、意外だった。


でも、今まで思ってきた祐太に告白されて
嬉しくない訳はない。

だが、口をついて出て来た言葉は、違った。


  「いきなり、そんなことを言われても」


別に、佐紀に、打算があった訳ではない。

ただ、初めてのことなので、
どうしていいか、わからなかったのだ。

すると、祐太は、


  「返事は、今でなくて、いいから。
   これ、俺の携帯」


そう言って、携帯の番号を書いた紙を、
佐紀に渡した。


  「えっ、でも……」


佐紀が、どう言っていいかわからずにいると
向うから、話し声が聞こえてきた。


  「じゃっ、じゃあ、
   返事、待ってるから」


そう言って、祐太は、走って行った。