坂井コーチの、練習に出てくる日は、
去年のこの時期に比べて、格段に多かった。

そして、学期末試験も終わり、
学校は、夏休みに入った。


今日は、男子が午前で、
女子は、午後からの練習だった。

佐紀は、自主練しようと、
少し早めに、出て来た。

まだ、誰も、来ていない。

体育館に入ろうとすると、
誰かに、呼び止められた。


  「佐紀っ!」


振り返ると、祐太だった。


  「あれっ、男子はもう、
   終わったんじゃないの?」


  「ちょっと、話しが、あるんだ」


  「何?」


佐紀は、祐太の方へ、歩いて行こうとすると


  「ストップ。そこでいい」


  「何?」


祐太は、モジモジしていて、
なかなか、話さなかった。


  「何なの? 何もないんだったら、
   自主練したいから、行くよ」


すると祐太は、


  「付き合ってほしいんだ」


  「どこへ?」


  「いや、そうじゃなくて」


祐太は、大きく息を吸うと、声を張り上げた


  「俺と、付き合ってください」


佐紀は驚いて、周りを、見回した。

街中の人に聞かれたんじゃないかと思う程の
大きな声だった。