坂井の中を、熱い物が、こみ上げた。
後味の悪い辞め方をして、
恨まれてるかも知れないと思っていたが、
感謝されるとは、思ってもみなかった。
むしろ、恨まれて辞める方が、
後腐れが無く、気が楽だと、思っていた。
結束を強めるために、あえて、
憎まれ役を、買って出たのだが、
坂井にとっては、皆、可愛い教え子である。
感謝されて、嬉しくない訳がない。
しかし、ここで甘い顔をすると、
せっかく、憎まれ役を買った、意味がない。
坂井にも、プライドがある。
「もう俺は、お前たちのコーチじゃない
そんな所に、大勢、立たれたら、
商売の邪魔だ。
さあ、帰った、帰った」
すると、佐紀が、
「私たちの試合、見に来てください」
と、言った。
これ以上、皆が、ここに居られると、
本当に、泣いてしまいそうだった。
「ああ、わかった。
また、見せてもらうから、
もう、帰った、帰った」
「じゃあ、失礼します」
そう言って、佐紀達は、帰って行った。
“何て、奴らだ。
あいつらを見て、本当に良かった”
坂井は、心の底から、そう思った。

