入って来た三田に、坂井は、
「おぉ、すまんな。
わざわざ、来てもらって」
「いえ」
「ワシが、甲陽のコーチをしてるのは、
知ってるだろっ?」
「はい」
「でなっ、もう、コーチを辞めようと
思ってるんだ」
「えっ、また、どうして」
「最近は、景気が悪くてな、
そうそう、店を空ける訳にも、
いかなくなってきたんだ」
坂井は、少しの沈黙の後、ボソッと、
「そろそろ、潮時だと、思うんだ。
どうだろう?
あいつらを、見てやってくれないか」
「はい…、私は、かまいませんが……」
「おお、そうか」
坂井の顔が、パッと明るくなった。
「だいぶ前から、新人戦で辞めようと、
決めていたんだよ」
「私は今、どこにも
属していませんから、大丈夫ですが
坂井さんは、いいんですか?」
「未練が無いと言えば、嘘になる。
だが、こうなった以上、ワシの最後の
仕事は、あいつらに、良いコーチを、
探してやることだ」
坂井は、三田をまっすぐ見据え、
「ワシの事は、気にせんでいいから、
三田君の思う通りやって、あいつらの
力を、引き出してやってくれ」

