通路で、コーチの周りに集まる、佐紀達。

皆うなだれて、下を向いていた。

コーチの怒りは、佐紀に集中した。


  「バカヤロー、
   お前、キャプテンだろうが。

   お前が全てを、ブチ壊したんだぞ。

   甲陽が、県大会へ行けないなんて、
   前代未聞だ」


  「すみません」


佐紀は下を向いて、小さな声で、答えた。

しかし、コーチの怒りは、治まらなかった。


  「あれだけミスすりゃ、
   勝てっこないだろっ。

   キャプテンが率先して、
   相手に、点ばかり、やりやがって。

   勝つ気がないのなら、
   キャプテンなんか、辞めちまえ」


佐紀は、唇を噛んだ。

そして、坂井は、遂に、


  「こんなチームは、知らん。
   俺は、もう、コーチを辞める」


全員、驚いて、顔を上げた。


  「サキといい、ユリといい、
   もう、お前たちの面倒は、見きれん。

   お前らで、勝手にやれ。
   俺は、辞める」


そう言って、帰って行った。

顧問の、荒井先生が、オロオロして、


  「ちょっと、どうするの?
   どうするの?」


そう言って、コーチの去った方と皆を、
何度も見た。

そして、コーチの後を追って、走って行った