オフィシャルのブザーが鳴り、
審判が笛を吹く。

  「タイム・アップ」


結局、甲陽は、逆転してからは一度も、
追いつかれることなく、試合を終えた。

試合後の挨拶。

  「ありがとうございました」


新垣の4番が、佐紀の元に来た。


  「次、私たちの分も、頑張ってね」


そう言って、手を差し出した。


  「うん、ありがとう。頑張るよ」


2人は、しっかり、握手をした。



ベンチでは梨沙が、大きく、息を吐いた。


  「ふ~、何とか、勝てたぁ」


しかし、もうベンチは、お祭り騒ぎ。

抱き合ったり、飛び跳ねたり、
喜びを、前面に出していた。

佐紀達が、帰って来た。

ベンチの皆が、ハイタッチで出迎える。

梨沙も、佐紀の前で、手を挙げた。

しかし佐紀は、そのまま、ベンチに座った。

仕方なく梨沙は、
後ろからやって来た友理と、ハイタッチ


  「サキ、勝ったんだよ。
   嬉しくないの?」


  「いや、嬉しいよ」


  「じゃあ、喜べばいいじゃん」


  「うん。でも、新垣のみんな、
   泣いてたから」


  「そこまで、気ぃ使うかぁ」


  「まっ、ええやん。
   それがサキなんやから」