佐紀たちが、ベンチに帰って来ると、
三田は、新垣のベンチを見ていた。
佐紀達の方に、向き直ると、
「向うは恐らく、プレスで来るだろう。
そこで、先手を打つ。
審判がボールを渡した瞬間、
プレスだ。
それまでは、素振りを見せるな。
突然セットして、混乱に陥れる」
三田は、タイマーを見て、
「残分4か。ちょっと、長いな。
ユリ、行けるな」
「大丈夫です」
すると、梨沙が、
「おっ、
“頑張ってみる”じゃないんだ」
「ウチはもう、あのユリとは、
ちゃうねん」
「よしっ、この最後4分に、集中しろ。
ユリ! 倒れたら、替えてやる。
だから、走れっ」
「はいっ」
「よしっ、行くぞ。
泣いても笑っても、この4分だ。
集中して行けっ」
「はいっ」
佐紀が、声をかける。
「集中して行くよ。イチ、ニッ、サン」
「ファイ」

