序盤は、入れて入れられての、
シーソー・ゲームを、繰り広げていた。

しかし、さすがは、全国へ来るチーム、
ミスは、見逃さない。

一つミスする度、点差が、開いて行った。

甲陽も、ミスに付け込んで得点をするが、
相手の方が、ミスは、少なかった。


中盤で三田は、ゲームを見ながら、


  「よし、メンバー・チェンジだ。
   モモ、来いっ」


しかし、なかなか、桃子は来なかった。


  「おいっ、モモ、早く来いっ」


すると、スコアをつけていた梨沙が、


  「コーチ、モモなら、
   試合に、出てますよ」


そう言われて、三田がコートを見ると、
桃子が、三田の前を、走って行った。


  「えっ。あっ、そうか。
   じゃ、じゃあ、ユリ、交代だ」


友理がオフィシャルに、交代を告げに行くと
三田は、大きく息をした。


  「フゥー」


梨沙が、笑いながら、


  「コーチ、しっかりしてくださいよ」


と言うと、


  「おお、すまんな。

   偉そうなこと言って、俺が一番、
   緊張していたのかもしれないな」


そう言って三田は、姿勢を正した。


  「もう、大丈夫だ」