観客席でも、皆、佐紀の異変に、
気付いていた。
千夏の、
「ちょっと、サキ、おかしくね?」
この言葉が、皆の気持ちを、代弁していた。
すると、坂井が、
「魔物に、捕まったかな?」
そう言うと、皆が、坂井を見た。
「ワシも、長い事やってたから、
わかるんだ。
ここで、勝つと負けるとでは、
大きな違いがある。
準決勝で勝つのとは、違うんだ。
インターハイの切符が、
手を伸ばせば、すぐ届く所にある。
するともう、それしか、
見えなくなってしまう。
そして、自分のやる事を忘れて、
それを取ろうとすると、
足元が崩れ、落ちてしまうんだ」
明美が、
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
と、坂井に詰め寄った。
「ワシなら、一発、殴るがなっ」
「コーチ、そんなことしたら、
テクニカル・ファウルですよ」
「そうだったな、ハハハ」
しかし、坂井は、
“それ以外に、方法はないと思うがな”
そう思った。
弥生は、両手を握りしめ、
「サキっ! 頑張れ」
それは、OGたち全員の、願いでもあった。

