双海学園は私立で、各地から、
優秀な人材を、集めていた。

どうやら、華子も、声をかけられたようだが
断っていた。

華子は一度、練習を見学に行ったのだが、
その鼻持ちならないエリート意識に辟易して
即座に断ったのだった。

しかし、双海のコーチは、
そのエリート意識をくすぐる事によって、
辛い練習を、乗り越えさせていた。



試合前の挨拶。

一列に並んだ双海は、
完全に上から目線だった。


  “全く、エリート意識ってやつは……”


華子は、根っからのお嬢様だった。

だから、エリート意識とは、
無縁で、過ごしてきた。


  “このチームに、入らないでよかった”


華子は、心から、そう思った。

ふと横を見ると、雅美が、
双海を、睨み返していた。

華子は、雅美を肘で小突き、


  「ミヤ、挑発に乗っては、
   いけませんわよ」


それで雅美は、ハッと、我に返った。

雅美は、上昇志向が強く、
蔑まれる事に、我慢がならなかったのだ。


  「もう少しで、
   自分を見失う所でしたわよ」


  「ゴメン。ありがとう」


華子は、左右を見てみたが、後は、
人間が出来ているのか、鈍いのか、
平気な顔をしていた。

華子は、ホッと、安心した。