県大会、3日目。


いよいよ、決勝である。

相手は、下馬評通り、双海学園。


佐紀たちが、体育館に入ると、向うに、
女の人の集団があった。

その中から、弥生と明美が、出て来た。


  「サキっ!」


  「あっ、弥生さん、
   おはようございます」


  「みんな、連れて来たわよ。
   これで、応援は、負けないわよね」


すると、その後ろから、


  「サキっ!」


  「あっ、須藤さん」


  「見せてもらいに来たわよ。
   頑張ってね」


  「はいっ、頑張ります」


集団の中から、野太い声がした。


  「おいっ、サキっ!」


その集団が割れて、坂井が出て来た。


  「あっ、コーチ」


皆、坂井の教え子たちである。

どうやら、坂井を囲んで、思い出話に、
花を咲かせていたみたいだった。

坂井は、佐紀達の所に来ると、


  「いやいや、ワシはもう、
   お前たちのコーチじゃない。

   今日は、一人の、甲陽ファンとして、
   見させてもらうぞ。
   頑張れよ」


  「はいっ、頑張ります」


やはり伝統校は、OGの結束も固いんだな、
と佐紀は思った。

しかし、それはまた、佐紀に、
無言のプレッシャーを、与えていた。