部活~ウチらバスケ部~高校編      ファイナル


今、思い出したのは、1クォーターの、
顔である。


  “自分たちが、リードしているのに、
   なんで、そんな顔をしてるんだ”


そして、その横を走る、甲陽の選手の、
姿が浮かんだ。

笑ってこそないが、なぜか楽しそうに見える

顔だけ見れば、どちらが勝っているか、
わからなかった。


  “どこが、違うんだ”


板倉は、ハッとした。


  “甲陽は、自分の意志で動いている”


  “明邦は、俺の言った通り動いている。
   そこに、あいつらの意志は無い。

   あるとすれば、俺に怒られたくない、
   という事だろうか”


板倉は、練習の時の顔を思い出し、


  “もしかしたら、あいつらの意志を、
   俺が、摘んでいたのかもしれない”


そして、


  “こんなの、バスケットじゃない”


そう、思った。


  “まだ、遅くはない。
   あいつらに、本当のバスケットを、
   教えてやらねば。

   自分で考え、行動する、面白さを、
   楽しさを。

   あいつらの、笑顔を取り戻すんだ”


板倉は、決意した。


  “一から、やり直そう。

   そして県大会は、
   笑顔で出来るようにしよう。

   あいつらに、最高の思い出を、
   プレゼントするのだ”


そして、板倉はもう一度、


  “今日は、いい経験をさせてもらった”


そう思いながら、アリーナを後にした。