その夜、友理の家。


母と、夕食を取っている時、友理が、
下を向いたまま、ポツリと言った。


  「ウチ、大学、行くわ」


やはり、友理には、ためらいがあった。

また、苦労をかけなければならないと思うと
言い難かった。


  「えっ」


  「ウチ、大学、行くわ。
   せやから、もうチョイ、頑張ってな」


しかし、母の答えは、友理の想像した、
以上のものだった。

母は、ホントに、嬉しそうに、


  「何、言うてんの。
   ウチ、あんたのためなら、
   何でも、出来んでぇ。

   そおかぁ、ようやと、決めたんか」


  「うん」


  「ほな、あそこの大学、目指し。
   あんたなら、行けんで。

   そおかぁ、行くかぁ。

   ウチ、俄然、やる気、出て来たでぇ」


  「やっぱりな。モモの言うた通りや」


  「ん? 何や?」


  「いやっ、頑張るわ」


  「そおかぁ、行くかぁ」


母は、何度も、その言葉を繰り返しながら、
嬉しそうに、食事をしていた。


後片付けの洗い物の時には、
鼻歌も、出ていた。

それを見て、友理は、
決めて良かったと、思った。

そして、


  “卒業したら、絶対、
   楽させてあげるんや”


と、心に誓った。