梨沙は、涙を拭うと、
「感謝してるんなら、態度で示してよ」
「態度って、何やの?」
「そうだなあ、一生懸命、走るとか」
「ウチ、一生懸命、やってるやん」
「もっと、もっと、必死に走るとか」
「それは、モモの、ギャグやわ」
「私のギャグって、何なの?」
「無理っ!」
「えー、そんなぁー」
「ハハハハハ」
ようやく、皆、元の皆に戻った。
「それで、あの時……」
佐紀がそう言うと、友理も、
何の事を言っているのか、わかった。
「うん、普段は、忘れてんやけど、
“殴られる”思たら、
あの時の事が、出て来たんや」
「恐らく、PTSDですわね」
「PTSDって、何?」
「正式な名前は、忘れましたけど、
過去に受けた傷が、何らかの
きっかけで、よみがえる事を、
言うらしいですわよ」
「ほな、たぶん、そうやわ。
サキらと会うて、もう、忘れたと、
思てたんやけど、
まだ、残ってたんやなあ」
皆、友理の為に、
何かしてあげられないかと思ったが、
どうしていいのか、わからなかった。
「時が、解決してくれますわよ」
この、華子の言葉が、精一杯だった。

