桃子のその質問に、皆が、ハッとした。
友理に父親がいないのは、知っていた。
しかしその質問は、してはいけないものと、
暗黙のルールとなっていたのだった。
しかし、桃子は、そんな事、知らなかった。
「いいや」
「あっ、ゴメン。
私んトコ、死んじゃったから、
つい、訊いちゃった。
ゴメン、ゴメン」
桃子は、明るく、そう言った。
今度は、皆、驚いて、桃子を見た。
そう言えば、皆、桃子の家の事は、
何も知らなかった。
他地区から、ここに来て、佐紀たちの中に、
一人入ってきて、遠慮していたのか、
自分の事は、あまり、話さなかったのだ。
「モモも、苦労、してんだね」
「さあ、どうなんだろう。
小さい頃、死んじゃったから、
よく、わかんない」
「じゃあ、モモの寒いギャグにも、
付き合ってやるとするかな」
「えー、同情なんか、いらないよ。
普通に、突っ込んでくれたら、
いいんだから」
「普通にって、それ、無理!」
「えぇー、なんでぇー」
桃子の告白に、勇気が出たのか、
友理が、話し始めた。
「ウチの、お父さんは、………」

