朝、佐紀の家。

玄関のドアが、勢いよく開くと、


  「いってきまーす」


佐紀が元気な声で、出て行った。

県大会が終わり、3年生が引退して、
今日からはいよいよ、佐紀達の代である。


  「梨沙~、おっはよう」


佐紀は、前にいた梨沙に声をかけた。


  「あっ、キャプテン、おっはー」


  「ちょっと、やめてよ」


  「だって、キャプテンじゃん?」


  「それは、そうだけど、
   改まって言われると、恥ずかしいよ」


後ろから、友理の声がした。


  「おはようさん」


  「あっ、ユリ、おっはよー」


  「おはようさん、キャプテン」


  「もう、ユリまでぇ」


  「せやかて、キャプテンやん」


  「だからぁ、それは、部活の時。
   普段は、今まで通りで、いいよぉ」


  「やっぱ、リサの言う通りやな」


  「えっ、何?」


  「リサと、賭けしたんや。
   サキに“キャプテン”って言うたら、
   どんな反応するかって。

   ウチは、喜ぶと思たんやけどなぁ」


  「何年サキと、
   一緒にいると思ってんの」


  「ウチはまだ、修業が、足らんわ」


  「もぅー、やめてよ」


  「じゃあユリ、帰り、ジュースね」


  「う~ん、わかったわ。

   も~ぅ、サキぃ、
   キャプテン、なったんやから
   もっと嬉しそうに、せな」


  「いいでしょ。
   そんなの、個人の自由なんだから」