俺が座っているチェアの近くまでくると「帰らないの?」と呟いた


仔猫は早く休みたいようだ



幸弘との見学の旅で歩き疲れたんだろう


その幸弘はソファーで絶賛屍ごっこ中だ



これ以上歩かせるのは可哀想だと、翼の手を引いて俺の足の間に座らせた



「………?」



すっぽりと収まった姿は愛嬌たっぷりで、表情を伺う仕草は男心をくすぐるには十分



俺は、分厚いファイルを何冊か横の棚から出して机の上に並べた



「この中にあるものから選んでくれるか?」



ファイルにはWingの春・夏の最新作の服や靴がカタログ状に収まってる


翼は今まで従って生きていたから、まだ自分で選ぶことに慣れてないのだ


その証拠にファイルをめくる度に俺を見る



だから俺は手助けをする



「翼の好きな色は?」



すると俯きはじめ、悩むように眉を寄せる


そして



「………白」



と自信なさげに呟く




「じゃあ、白い服を見ようか」

笑顔で言うと、翼は安心したように「うん」と小さく頷いた



それから靴やカバンもゆっくりと二人で選んだ



幸弘はそんな俺たちを見て「結局Wingかよ…」と漏らしていた