幸弘に返事をする声には異常なほどに耳が反応する 思わずばっと視線をあげるが、幸弘が邪魔で相手がよく見えない だけど、よくわかる 随分と疲れているはずなのに、いったい何処からか力が出てくる 不思議と笑みが零れ、憂鬱だったはずの気分は爽快に変わる こんなことが出来るのは1人しかいない 「だから今は俺とどっか行こうか?」 「慎は…?」 優しい鈴の音のような声に鼓動が早まる 気がつけば声のするほうに向かって走っていた 「……………………っ翼!」