「それが春江と交わした 【たった一つの約束】 じゃ…」 賢三は話し終えると、 冷めたコーヒーを一気に飲み干した。 「素敵なお話ですね。 奥様も…村上さんも……」 留美は黙って聞いていたが、 その目からは 自然と笑みと涙がこぼれ落ちる。 激動の時代を精一杯走り抜けた 二人の話に 留美の心は いとも簡単に打ち抜かれた。