春江は 真っ直ぐにわしを見つめている。 わしには、 もはや春江を拒む理由がなかった 春江は 覚悟を決めて家を出てきたのだ。 わしは はじめて春江を抱きしめた。 「僕には、あなたがすべてです。 あなたが僕の前から いなくなってから、 あなたの笑顔を 思い出さない日はなかった」 そう耳元で囁くと 春江を抱きしめる指先に グッと力を込めた。