「9年…いや、10年ぶり…か。 奈々が東京に出て来てたなんて 知らなかったよ」 未だ消えない動揺を悟られまいと 恭一は無理にも毅然と振る舞った。 「3年くらい前…かな。 こっちに出て来たのは。 ほら、海辺に丸正水産って 会社あったでしょ? 私、そこに転職したんだけど、 あの会社が東京に支店を 出してね。 で、私も転勤してきたってわけ」 「へぇ~、そうだったのか… 3年前…に…か…」 3年前というと 恭一は丁度留美と出会った頃だ。 そう思った瞬間、 出会った時の留美が脳裏を掠めた。