急に立ち止まった奈々子に
他の二人が
「知り合い?」
と訊くと、
「ぅ…うん…あ、すぐ行くから、
先に行ってて」
と奈々子は慌てて二人に促した。
少し気まずそうに焦る奈々子に
女の勘が察したのか
「ごゆっくり~」
とエレベーターから顔を覗かせて
意味ありげに手を振っている。
「そんなんじゃないってばぁ~」
とエレベーターが閉まる前に
菜々子は慌てて訂正していたが、
扉が閉まりきったのを確認すると
また恭一の方を向き直して
「恭くん……元気?
会うのって、何年ぶりかな?」
と懐かしい笑顔で訊いてくる。
事務員同士のやり取りの最中から
遠い記憶に気を取られていた恭一は
「あ…、ああ……元気だよ。」
と久々の再会にも関わらず
何とも色気のない挨拶を返すのが
精一杯だった。

