「恭……君?」 明らかに深い仲でしか掛からない 呼び方に 何でこんな所で?とハッと恭一が 振り返ると すれ違った事務社員の一人が、 立ち止まってこっちを見ている。 改めて見直してみた恭一の脳裏に 写真のように鮮明な記憶が蘇った。 「……っ!」 「奈々…か?」 恭一は時が止まったように 茫然とその場に立ち尽くした。 奇遇とはまさにこの事だろう。 驚きに言葉を失った恭一の前に 立っていたのは、 高校時代の恋人の奈々子だった。