(酷なことを訊くもんだ…)
と恭一は答えの無い問いに
顔を歪めた。
頼り甲斐のある上司よろしく
武田を救った恭一ではあったが、
今度は留美を宥めるのかと思うと
その方が遥かに気が重かった。
(あいつ、まだ怒ってるだろな)
激昂していた留美を思い出すと
恭一の口から深いため息が洩れた。
まぁ、でもいつもの事じゃないか
と開き直りはしてみたが、
都合のいい介錯に過ぎず
スッキリと気が晴れるはずもない。
結局、答えが見い出だせないまま
恭一は開いた扉から掃き出された。
二人がエレベーターを降りて
ビルの入口に向かうと
対向してくる3人の事務社員と
すれ違った。
企業テナントビルの一階フロアは
様々な人が行き交っており、
事務社員とすれ違うなど
ごくありふれた光景だった。
だからか、
すれ違った顔に見覚えがある、と
瞬時に思いつつも
気に留めることもなく
恭一はそのまま歩を進めた。
と、その時だった。

