「さぁ、あとちょっとだ」
留美の心中を知る由もない恭一は
てっきり景色に見とれた振りで
休んでるんだと勘ぐっては留美を
急かすと、
また黙々と階段を登り出した。
上まではあと少しだったが、
「その時」を目前にして
不安と期待に揺れる留美には
一段一段がズシリとキツく思えた。
やっと上まで登ると、
小さな土産物屋が2軒あった。
こじんまりとした売店の中には
綺麗なアクセサリー類の土産物が
整然と陳列されている。
あれこれ見た中で、
海亀の可愛い携帯ストラップが
目に止まって留美が手に取ると、
「俺が子供の頃は、
海亀が産卵に上陸してたんだ。
夜中に見に行ったりもしてさ。
小学校で飼育もしてたんだぜ。
今はもうないみたいだけど…」
と恭一は信じ難い話をさも当たり
前のように話している。
「すごいね!…水族館みたい!」
留美が興味津々に目を輝かせて言うと
「そう言われりゃ、そうだな。」
と恭一も
今更気づいたかの様に笑いながら
驚いて見せた。
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