二人はぼんやりと海を見ていたが
ふいに恭一が立ち上がると、
下を向いては何かを探し始めた。
何か見つけて拾い上げると走って
戻ってくる。
恭一が広げた手の平には
小さなホラ貝が乗っていた。
「これをキレイに磨いて、
土産物にして売ってるんだよ。
後で寄ってみるか!」
と言って、
また波打ち際まで走って行った。
夢中で貝を探す恭一の無邪気さに
留美の心はまた不安に襲われた。
公園で想いを告げた春江さんは
どんな心境だったのだろうか?
突然告げられる彼の反応に
怖さは感じなかったのだろうか?
無論、彼女と私とではその状況や
時代も違えば、
性格だって同じではない。
けれどプロポーズともなれば
それ相応の覚悟がいったはずだ。
公園に向かう間
彼女は何を思っていたのだろう?
やはり不安に駆られたのだろうか?
留美は弄っていた砂がサラサラと
零れ落ちるのをギュッと掴むと
遠くまで行った恭一に
大きく手を振って呼び戻した。

