病室に入ると、 泣きじゃくる義娘以外は、 静寂に包まれていた。 午前中の談笑が まるで嘘だったかのように…の。 医師はわしと目が合うと俯いて、 力無げに首を横に振った。 わしは悔やんでも 悔やみきれんかった。 何故、あのとき 約束を果たさなかったのか、と。 春江は待っていたに違いない。 わしの『言葉』を…の。 今更言ったところで 春江はもう答えてはくれん。 そう咽び泣くわしの目の前で、 春江は静かに眠っていた。 ・