「わし…と…また一緒に
 なって…くれるか?」







賢三は絞り出すように微かな声で
言った。




春江に成り済ましていいものかと
少し考えて、




留美は結局黙ったまま、
賢三の手を両手でそっと包んだ。








その時だった。









どこからともなく浮かんだというよりは、
呼び掛けられたように





留美の頭の奥で囁く声がした。










【ありがとう、おとうさん】










不思議だが留美はためらいもなく
自然にその言葉を賢三に囁いた。








賢三は目を閉じると涙が一滴頬を伝った。





途端、留美の手を握る力が抜けて、





賢三はまた静かに眠りについた。