時計の針は10時をまわっていた。




賢三はまだ目を覚まさず、
留美も疲れて、
ウトウト仕掛けていた。




突然、賢三の呻き声が聞こえて、
留美はハッと起き上がったが、
賢三はまだ眠ったままでいる。




(気のせいか…)




留美は不安も安心も混ざりながら
変化のない賢三にまた目を配った。




ふと掛け布団がはだけているのに
気がついて直そうとした瞬間、










突然、グッと手を掴まれた。








「……っ!」








反射的に手を払おうとしたが、
賢三の力は想像以上に強く
留美は痛みと驚きに顔を歪めた。




だが、それよりも留美を惑わせた
のは
思わぬ賢三の問いかけだった。












「春江……か?」