駅に着くと、
「私、北戸田に住んでるの。
埼京線だから、ここで…」
と奈々子は恭一に告げると
足早に改札に向かおうとする。
「俺は阿佐ヶ谷に住んでるんだ。
あの…さ……困ったら、
遠慮せずに連絡よこせよ…な」
と慌てて呼び止めると
振り返った菜々子に
携帯番号を書いた紙切れを渡した。
「ありがとう…」
と奈々子は笑顔に戻って
受け取ったが
その笑顔は期待が外れた寂しげな
感じに受け取れた。
奈々子が受け取った紙切れを
バッグにしまうのを待って、
「俺は…やっぱり不倫は
やめたほうがいいと思う…」
と恭一が最後に言うと、
奈々子は微妙に間を空けて
意地悪風に切り返した。
「じゃあ、恭くん、
また私と付き合ってくれる?」
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