店員がコーヒーのお代わりを
催促に来たところで、
二人は店を出ることにした。
行き交う人波を避けながら
駅までゆっくりと歩く。
会話はほとんどなかった…
途中、何かの祝勝会なのか
大学生の集団が歩道を塞いで
異様な盛り上がりをみせていた。
その中を縫うように進んだが
万歳三唱してる大学生がよろけて
菜々子にぶつかった。
押された彼女は勢い余って
悲鳴とともに歩道脇に倒れ込む。
恭一は
咄嗟に奈々子に手を差し伸べた。
が、手を繋いだ瞬間、
ハッとして手を引っ込めると
「大丈夫……一人で立てるから」
と奈々子は事も無げに歩き出す。
スタスタと歩いていくその背中は
強くとも強がっているとも見て
取れた。
恭一は思い知らされた。
お互いの成長への満足感など
自分の勝手な偶像に過ぎないと…
(菜々…
お前、いつから独りなんだ?)
実を結ばない恋が
彼女を強くさせたのだろうか?
暢気に浮かれていた自分を
自嘲しながら
菜々子の背中を見つめていた。
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