「そんなに悲観しないで。
これでも会っている時は
幸せなのよ…
彼とは、こっちに出てきて
知り合ったの。
彼に奥さんがいることは
最初からわかってたわ。
絶対に始めてはいけない恋だと
いうことも…ね。
でも、私も寂しかったんだと
思う。
彼の優しさに甘えてしまって…
気がついたら始まってたって…
こんなの…言い訳にもならない
けど……
もう2年近くになるわ…」
奈々子は努めて明るく話した後、
窓の外に目を移した。
まだ信じられない恭一は
「それで、奈々はどうするんだ?
今のままじゃ…」
と気を取り直して言いかけたが
菜々子は強い口調で遮った。
「わかってるっ。
わかってるけど…
別れることもできないの…」
と恭一になのか
それとも自分になのか
答えの出ない苛立ちをぶつけた。
ゆっくりと恭一に視線を戻すと
「もう恭くんが知ってる
私じゃないのよ…。」
と、奈々子は寂し気に微笑んだ。
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