「なぁ、次はどこ行くんだ?」
古びた分厚い木のドアを押して店から出ると、
恭一はやっと解放されたかの様に
背筋を伸ばしながら訊いた。
「次? 次はねぇ…え~っと……
あ、ウッドベリーっ!」
そう元気に答えたのは恭一の彼女の留美だ。
恭一とは違い、こちらは声のトーンも明るい。
留美は恭一より歳は1つ年下で、
恭一とは違う会社で営業事務の
仕事をしている。
生来の性格か職業柄か
負けん気が強く、
普段から勝ち気な留美が主導権を握っている。
留美の勢いに翻弄されたりもして
すべてが了解とまではいかないが、
恭一はそうした二人の距離感が
しっくり来るとも感じていた。
「ウッドベリー…か…
結構、歩くなぁ…
少し休まねぇ?」
と恭一はダルそうに顔を歪ました。
「ちょっとぉ~、元気出してよ。
行きたい所は
まだ山ほどあるんだから~」
留美がヤキモキしながら地団駄を踏む。
が、地団駄を踏んだところで
恭一の気力も体力も回復するわけではない。
「もぉ~」と口を膨らまし、
待ってくれるのかと思いきや
辟易している恭一のことなど
まるでお構い無しといった具合に
留美は颯爽とウッドベリーの方角へ歩き出した。