進はその時の事を思い出しているのか、再び眉間にシワを寄せて真顔になった。
「あっという間に迫ってきた津波に、危なく飲み込まれそうになって……実は体半分が水に埋もれたのを、助けてくれたのが伊藤さんだったんだ」
そんなに大変だったなんて……もしかしたら、こうして会えなかったなんて……。
思わず唇をキュッと噛み締めた。
「津波から助けてくれた後、ドロドロだった俺に着替えを貸してくれて、しかも元々風邪気味だったのに濡れたからなのか、高熱で寝込んだ俺の看病までしてくれて……そんな感じだったから、震災後2~3日は、ほとんど身動きが取れなかったんだ」
「それで、今は? 体調は、もういいの?」
「ああ。ここは断水もしなくてガスもプロパンだったから、電気が無い事以外は普通の生活ができて、伊藤さんのおかげで全快……だけど、俺が回復したら、今度は伊藤さんの様子がおかしくなって……」
進はそう言うと、2階に視線を向けた。

