けれど、実を言うと、パトリックには一つ大きな不満もあった。
 メリアの身につけているドレスのことだ。
 髪飾りも、仮面も、その全てがパトリックが用意したものであるにも関わらず、今彼女の着ているドレスだけはその中に含まれていなかったのだ。
 
 彼女には一見似合わないであろうダークな色調に、首ぐりが大きく開いた女性らしさを引き立たせるデザイン。シンプルなようだが、ふんだんに裾丈に使用されたピンクのレースが、その大人びた色合いに可愛らしさをプラスしている。決して派手ではないが、ドレスのあちこちに散りばめられた透明で小さなガラス玉が、光の下へ入ると途端にきらきらと煌き出すのだ。

(本当に・・・、悔しいが彼女にはよく似合っている・・・)
 
 パトリックは、そんな心の声をメリアに悟られまいと、変わらずの白い微笑みを口元に浮かべつつ、溜息を呑み込んだ。

 というのも、このドレスを彼女に送った張本人を、パトリックは知っていたのだ。けれど、送られた当の本人のメリアは、仮面と同じく当然ながらドレスもパトリックがくれたものだと思い込んでいる。送った本人は、絶対に彼女に告げるなとでも言うかのように、冷ややかで鋭い目つきでパトリックを睨みつけていた訳で。

「・・・今回ばかりは恨むぞ、エド」
 ぽそりと呟いたパトリックに、何か言いました? と聞き返すメリア。パトリックは何も、と苦笑を漏らした。