以前、アダム・クラーク男爵の屋敷で、彼にティーを引っ掛けてしまったとき、パニックを起こして彼の服を脱がせようとしてしまったことを思い出し、メリアは苦笑を漏らした。

 上着を脱がせ首元を緩めた後、メリアはそっと額の汗を清潔な布で拭ってやる。

「そう言えば、あの屋敷で以前にも似たようなことがあったわ・・・」
 屋敷の地下での出来事。
 怪我をした闇の騎士(ダーク・ナイト)に、こうして水桶と布を用意したことがあった。

 暗闇の中で、彼の美しく艶やかな茶の髪に魅せられ、メリアは未だあの夜の出来事が昨日の出来事のように胸に蘇る。

「なぜだか・・・、貴方が彼と重なってしまいます」
 メリアは静かに呟いた。

 目の前で眠っているのは、エドマンド・ランバート伯爵。
 完璧で非のうちどころの無い人物だ。けれど、彼はひどく不器用で、そして意地悪だ。
 そして、決定的に違うのはこの金の髪。
 彼の髪も確かに美しいが、闇の騎士(ダーク・ナイト)のものとはまるで違っている。

「貴方と彼は、全く似ていないのに・・・」
 メリアは深く溜息をつくと、彼の額に宛がっていた布を水桶の中に浸した。

 
 メリアは、テーブルに置いたハーブ達に手を伸ばす。
 少し時間はかかるが、このハーブをじっくりと水から抽出して、彼に飲ませる必要がああった。

 水桶に浸した布を絞り、彼の額に載せると、メリアはそっと彼の為に特性ハーブティーを作りにかかった。
 これが出来上がる頃には、彼の意識が回復していることを願って・・・・・・。