頭が真っ白。



何を言われても入ってこなくて。



気づけば雪村の胸ぐらを掴んでいた。



「あんまりナメたことしてくれんな…。悪い冗談なら許さねぇぞ…」

「ウソかどうかは本人に聞けば?」



殴る気なんかなかったはずなのに、俺の右手が雪村を勝手に殴った。



「善様っ!!」

「あっ…」

「何をなされてるんですか!!雪村様、大変申し訳ありませんっ!!」



さすがに雪村も頭に来たらしく、いつもの胡散臭い笑顔は消えていて。



近野に強い力で引き離された。



「オイオイ、これナイって…」

「雪村様、血が…」

「力強すぎ。奥歯逝っちゃったじゃん…。グラついてんだけど」



近野が渡したティッシュが赤くなり、本気で殴ったんだと言うことに今気が付いた。



キレてしまった…。



「殴ったことは黙っといてやるからさ~、怜ちゃんちょうだい?」

「お前なに言ってんだよ。好きでもなんでもねぇくせに!!」

「そっか、ガッカリ。じゃ、学園に報告しとくから」



そう言って雪村は出て行った。