引っ越しが完了したら部屋に山田さんがやってきた。



「使ってないコテ。それに化粧品よ」

「いらないの!?」

「家が美容関係の仕事してるのよ。腐るほど持ってるわ」

「まさか…くれるの?」

「好きなだけもらってちょうだい」

「わぁ~…。使い方わからない…」

「教えてあげるからそこに座る!!あなた本当に女なの!?」



どうやら山田さんはあたしを女にしてくれるみたい。



女同士でこういうの初めてかも…。



「チークはこの色ね」

「なんか照れる…」

「あなた元はいいんだからもっと気にしなさいよ」

「すみません…」

「マスカラも塗ったことないの!?」



山田さんのメイク指導は夜中まで続き、善のことを紛らわせてくれるにはちょうどよかった。



次の日、教えてもらったメイクを施し、制服を着る。



秘書さんから朝に借りた調理室で作ったお弁当を持ち、S科のドアを開けた。



「おはよう、善。今日はハンバーグ弁当だよ」



あたし、諦めるのやめる。